先祖になる
「先祖になる」は、岩手県陸前高田市に住む佐藤直志さんを震災の数週間後から1年半追い続けたドキュメンタリー映画だ。
直志さんは77歳。津波で消防団員だった長男を亡くし、家は半壊した。しかし、この老人はめげない。休耕田で稲作を始め、ガレキの残る土地にソバの種をまく。奥さんは仮設に住むというのに、一人、半壊した家に居続ける。そんな直志さんの夢は、家を建て直すことだ。きこりでもある直志さんはチェーンソーを手に、若いものを引きつれて山に入る。
この映画を見て、直志さんの強さに感銘を受ける人は多いだろう。だが、直志さんは、悲壮感を漂わせているわけでもなく、声高に何かを主張しているわけでもない。その生き方は自然体である。土地に根ざし、自然に感謝をし、生活の中に信仰を見出している。人として生きるということは何なのか、海と山に囲まれた国、日本に住む人間の精神性とは何なのか、考えたくなる映画である。
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