素数たちの孤独
パオロ・ジョルダーノの「素数たちの孤独」は、幼い頃に経験したことが原因で心を閉ざしてしまったアリーチェとマッティアの物語だ。
一瞬の決断がひとりで受け止めるには重すぎる結果を招き、その重さゆえ、他人と分かち合うことができない苦しみを抱えてしまったふたり。
アリーチェは食べることを拒否することで、マッティアは自らを傷つけることで生き延びている。ふたりは惹かれ合いながらも、手を取り合うことが出来そうで出来ない隣り合った素数たちなのだ。
主人公のふたり、子供から目を背け続ける両親、認めたくない事実をウソで固めるお手伝いさんなど、登場人物の苦しみから逃れられない人生が平易な言葉で語られていく。
物語はかすかな希望を感じさせて終わるが、アリーチェとマッティアはどう生きていくのか、静かに見守っていたいような気がする。たぶん、それは私たちの物語でもあるからだ。
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