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sábado, 28 de janeiro de 2023

感想文:小田嶋隆著 『諦念後 ーー男の老後の大問題』

本のタイトルに「男の老後の大問題」と書いてあるが、女の老後と読み替えてもいいと思う。
特に仕事を続けてきた女性が会社という組織を定年退職したり、仕事をしてお金を稼ぐということに終止符を打った後というのに男女差はあまりないというか、私は、何度も首を縦に振りながら読んでいた。身に覚えがありすぎる。

まず、帯にある「ジジイだって、歳を取るのは初めての経験なのだ。許してあげてほしい」。
これをそのままババアにしてほしい。レジでサイフから上手に小銭が取り出せず、後ろからの視線に焦りまくったり、頑張ってスマホにアプリを入れたけれど、指先が乾燥していてタッチがうまくいかなくて支払いができず、結局、現金で払っても許してほしい。

第一章では「そして、自身の老化に直面しようとしないことこそが、最も深刻な老化であるという一種屈折した経過を経ながら、われわれは困ったジジイに変貌していく」
これもババアでよし。美容院で「もう髪を染めるのは止めようと思うのよ」と言いながら、心の中では、「いやいや、まだですよ」という言葉を期待しているのだ。「年齢相応にグレイヘアがいいですね」などと言われたら、きっとキレる。その美容院には2度と行かないだろう。

ギター、ジム、断捨離、終活、同窓会、植物…。どこかで誰かが似たり寄ったりのことをしている。

小田嶋さんの文章は皮肉とユーモアが効いているけど、笑いながらもグサっと腹や胸に刺さってくることが多い。だから、副題に「大問題」と入っているのだ。今の私は、第14章の「定年後、何歳まで働けばいいのか考えてみた」が大問題である。これは、年金額、貯蓄額・資産に大きく左右されることではあるが、小田嶋さんは、われわれの昭和の先輩方のように「カネ」のために働くというのが、本来の労働だ。「夢」「自己表現」「生きがい」などという、なんか耳にやさしい、これが正しい道だと聞こえるような言葉に騙されてはいけないと言っている。なぜなら、「われわれの国は、一部の金持ちの下で貧しい者がさらに貧しい者から搾取する、そういう情けない国に変貌しつつある」からだ。そうだよ、老後になって、そんな悪巧みに一枚噛みたくはない。

それにしても、亡くなられて残念だ。まだまだ、書き続けてもらいたかった。合掌。

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