Never Let Me Go
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読んだ。彼の作品は他のどれも読んだことがないが、この小説は・・・・後をひく。そして、人に勧めたいのだが筋書きを伝えてしまうことは避けたい小説だ。解説で柴田氏が書いているように予備知識は少なければ少ないほど良いのだ。海外の書評をいくつか読んでみたが同じように考えているようで、つまり書評を書くにも苦労をしているのが感じられて、それはそれでご苦労なことだなぁ~なんて思ってしまった。
でも、感想は語りたいのだから困ったものだ。
他の素人さんたちはどうしているのかと思い、グーグルのブログ検索をかけたら、出てくる出てく感想文の数々。さすがに売れている本だけのことはある。
しかし、私の感じていること、見えてきているようで見えてこない何かをうまく表現してくれている人がいない。
本の読み方なんて100人いれば100人の感想があって当然とは思うが、かすりもしない。はてな?
ということは、他人の文章を引用することなく自力で書くしかないのか。
非常に変わった状況にある2人の女性と1人の男性が幼い頃から思春期を経て大人になるまで共に過ごした日々を31歳になったキャシー・Hが振り返って語る話である。ここでまず気になるのは、その非常に変わった状況は、この話の中でキ-になることなのかどうかということだ。私は作家が語りたいことを表現するための場として設定したことであって、さして重要なことではないように思う。語りたいことをより強く押し出す設定には違いないけれど、読後にはその特殊な状況より3人の物語が心に残った。
映画、A.I.を見た時にも同じように思ったこと。「この映画はロボットに心があるかないかというようなことをスピルバークは言いたかったのではなく、もっと人として普遍的なことを言いたかったのだ」
近頃、年のせいか物事をわすれやすくなった。集中力も欠けている。集中力がないから忘れるのだとも言える。物事を覚えているというのはどういうことか? 私の記憶とはなんなのか? 生きていくことは記憶の積み重ねなのか? 忘れないこと、忘れる自分、忘れられた人々、ものごと。
私も「ロスト・コーナー」に行けば失くしたものを取り返すことができるのだろうか?
自分自身の中にいつまでもしっかりと抱いていられることがあるのだろうか?
決して忘れない思い出があるのだろうか?
今まで生きてきた時間より残された時間が確実に短いとわかっている生活で、どれだけ経験し濃い時間を過ごせるのだろうか?
と心に小波がたくさん立ってくる小説であった。
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